エンハンスメント? トリートメント? 宝石の価値に関わる含浸処理とは

2019年11月19日 火曜日

エンハンスメント? トリートメント? 宝石の価値に関わる含浸処理とは

INDEX

  1. 1. 含浸処理とは宝石をキレイに見せるための処理
    1. 含新物質によってエンハンスメント・トリートメントに分かれる
  2. 2. 含浸処理で使用する含新物質はワックス・オイル・樹脂・鉛ガラス
    1. 1.「ワックス」を使った含浸処理はエンハンスメント:天然石扱い
    2. 2.「オイル」を使った含浸処理はエンハンスメント:天然石扱い
    3. 3.「樹脂」を使った含浸処理はトリートメント:価値が低い
    4. 4.「鉛ガラス」を使った含浸処理はトリートメント:価値が低い
  3. 3. 含浸処理で価値が下がった宝石の見分け方
    1. 1.ルビーに細かい線や気泡があるときは注意
    2. 2.虹色に反射するサファイヤは充填されている場合がほとんど
    3. 3.安価なのに鮮やか過ぎるエメラルドはトリートメントの可能性大
  4. 4. 含浸処理による宝石の価値の違いを理解して選ぶことが大事

宝石を購入した際に付いてくる鑑別所に記載されている「含浸処理」とは、天然石を美しくするために施される処理のことです。

ルビーやサファイヤ、エメラルドなどには、ほとんどこの含浸処理が行われています。もちろん、含浸処理が施されていても、天然石には変わりありません。

ただし、処理の仕方によっては宝石の価値が下がってしまう場合もあるので、注意が必要です。

そこで今回は、含浸処理とは具体的にどのようなものかについてご紹介します。また、含浸処理によって価値が下がった宝石の見分け方についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

含浸処理とは宝石をキレイに見せるための処理

採掘された宝石(原石)は、研磨・カットを施すことによって美しく仕上げられていきます。しかし、それだけではカバーできない内部のヒビや割れ、欠け、肉眼では見えないような細かなものがると、クラリティ(透明度)が低くなる原因になります。

そこで、ヒビ・割れ・欠けなどを目立たなくするために、その宝石の屈折率に近いオイルや樹脂などの充填剤を宝石にしみ込ませます。これが「含浸処理」です。

含新物質によってエンハンスメント・トリートメントに分かれる

同じ含浸処理でも、宝石にしみ込ませる物質(含新物質)によって、エンハンスメント処理(改良)とトリートメント処理(改変)に分かれます。そして、それは宝石の価値の違いに繋がっていきます。

含浸処理で使用する含新物質はワックス・オイル・樹脂・鉛ガラス

前述したように、ひとくちに含浸処理といっても、宝石にしみ込ませる含新物質によってその特徴は異なります。ここでは、含新物質により大きく4つに分けて説明します。

1. 「ワックス」を使った含浸処理はエンハンスメント:天然石扱い

ワックスを使った含浸処理は、表面のざらつきや細かな傷をなくし、ツヤを出すときに行われます。翡翠やラピスラズリ、ラブラドライトなどに施されます。

2. 「オイル」を使った含浸処理はエンハンスメント:天然石扱い

オイルを使った含浸処理は、宝石内部のヒビや傷がカットや研磨などによってそれ以上拡大しないようにするためと、クラリティを高めるために施されます。「傷がないものはない」といわれるエメラルドには、ほとんどこのオイルを使った含浸処理が行われています。

一般的には樹木から採取されるシダーウッドオイルが使われます。

3. 「樹脂」を使った含浸処理はトリートメント:価値が低い

傷やヒビを埋めるために、オイルの代わりに樹脂を使う含浸処理は、トリートメントとみなされます。樹脂はオイルに比べてエメラルドの屈折率に近いため、傷の程度が大きい場合に使われることが多く、改変度が高いためです。

よって、樹脂含浸処理を施された宝石は、市場価値がかなり低くなります。

また、ターコイズなどのもろい石をカットや研磨などに耐えられるようにするために、樹脂を使って含浸処理する場合もあります。

4. 「鉛ガラス」を使った含浸処理はトリートメント:価値が低い

現在、安価で流通している透明度の高いルビーやサファイヤ、エメラルド、ダイヤモンドなどの多くは、この鉛ガラスを使った含浸処理が施されています。

こちらも改変度が高く、鉛ガラスによる含浸処理を施されたものは「ガラス玉」と同じような価値しかありません。

鑑別書に「宝石名+鉛ガラス」「鉛ガラスの含浸処理あり」と書かれている場合は、妥当な価格かどうかをよく考えましょう。

なお、「含浸」「鉛ガラス」の表示がなくても、「透明物質の充填」などと記載されていれば、鉛ガラス含浸である可能性が高くなります。

含浸処理で価値が下がった宝石の見分け方

エンハンスメントは価値に影響しない含浸処理ですが、トリートメント含浸処理で価値が下がってしまう宝石は数多くあります。そういった宝石は安価で手に入るというメリットはありますが、宝石として価値がないばかりか、美しい状態を長く保つことが難しいものがほとんどです。

そのような宝石を間違って手にしてしまわないために、ここでは含浸処理によって価値が下がった宝石の見分け方についてご紹介します。

ルビーに細かい線や気泡があるときは注意

上述したとおり、ルビーは鉛ガラスによる含浸処理をされたものが多く出回っています。鉛ガラス含浸処理が施されているかどうかを見分けるには、ルビーの表面と内部をチェックします。

  • ルビーの表面に光を当てたときに、細かい線のようなヒビが見える
  • ルビーの内部に小さな気泡がある
  • 大粒なのに安価である

これらにひとつでも当てはまれば、鉛ガラス含浸処理をされたルビーである可能性が大変高く、価値はほとんどないといっていいでしょう。

虹色に反射するサファイヤは充填されている場合がほとんど

サファイヤも、内部に内包物や欠け、ヒビがあった場合に、ガラスや樹脂で含浸処理をするケースが多いです。内部にガラスや樹脂が充填されているかどうかは、光を当ててみるとわかります。

サファイヤに光を当てて角度を変えながら見ていったときに、一部が虹色に反射することがあれば、充填されていると考えていいでしょう。

安価なのに鮮やか過ぎるエメラルドはトリートメントの可能性大

前述のように、エメラルドはほとんどがオイル含浸処理を施されています。あまりにも一般的なため、その旨を開示されていない場合もあるほどです。

ただし、価値が下がらないエンハンスメントの範疇に入るのは、透明なオイルを使用している場合です。なかには、エメラルドの色を濃くするために、色の付いたオイルを使用して含浸処理を行っているものもあり、これはトリートメント扱いとなります。

安価であるのに色がとてもキレイな場合は、トリートメントを疑ったほうがいいでしょう。

含浸処理による宝石の価値の違いを理解して選ぶことが大事

エンハンスメントでもトリートメントでも、宝石を美しく見せるのが目的であることに変わりはありません。重要なのは、どのような含浸処理をすれば宝石の価値がどうなるのかをきちんと理解しておくことです。そうすれば、その宝石が適正価格であるかどうかの判断もつき、自分が望む宝石を手に入れることができるでしょう。

また、売りたい宝石がございましたら「色石BANK」へお持ちください。豊富な知識を持った「色石BANK」の専門スタッフが、しっかりと丁寧に鑑定を行います。

守屋啓
著者・監修:守屋 啓(もりや はじめ)
一般社団法人 宝石鑑別団体協議会(A.G.L)所属のAGTジェムラボラトリーにてグレーダーとして色石・ダイヤの鑑別に従事。その後、世界的に権威のある鑑別機関、GIA JAPANのG.G.(グラジュエイト・ジェモロジスト)プログラム講師として活躍。GIAが日本撤退後は、各地で宝石鑑別の講師として活躍する第一人者。